今日は休日だというのに一日朝から忙しかった。
朝食を食べに食堂へ行こうと部屋から出れば、扉の前に山積みのプレゼントたち。
嗚呼今日は自身の誕生日だったな、とそれを見てまだぼんやりしてる頭でそう思った。
忘れていたわけではないがそこまで気にしていたわけでもない。
綺麗に包装されているプレゼント達を部屋の中に運び込み、やっとの思いで食堂へ行けばたくさんの女の子たちに囲まれた。
愛想笑いを浮かべて受け流すと次に待ち受けていたのは幹部生以上に豪華絢爛な食事。
学園側がわざわざ用意するわけないし、誰かが勝手にやったのだろう。
変なものが入ってないことを祈りつつ、折角の食事だからとけっこうな時間をかけて片付けた。
その後も絶え間なく人が自分の元に訪れてきて、気がつけばもう昼が過ぎている。
誕生日を祝われるのは悪くはないが、途中でいい加減堪えられなくなり人がひいた隙に森へと抜けてきた。
森に来てからもたくさんの動物に囲まれたがこれは全然苦ではない。
むしろ一緒に居れば居るほど癒される。
寮にはとうぶん戻りたくないので、動物たちと此処で戯れることにしたのだ。
「あ、ルカぴょん!」
どれぐらい時間が経ったのだろう。
閉ざされていた目蓋を開けると赤い夕陽が視界に飛び込んできた。
いつの間にか日は暮れかけており、動物たちと遊んでいるうちに疲れて眠ってしまったようだ。
深く眠りに落ちていたにも関わらず、目が覚めたのは自身の名を呼ぶ声が聞こえたから。
「こんな所に居ったんか、」
探したんよ、と言いながら目の前に来た少女のツインテールが揺れている。
陽の光が茶金の髪に溶け込んで綺麗だなと思い、睡魔がまだ覚めきっていない眠気眼でぼうとその様子を眺めた。
「今日、ルカぴょんの誕生日やろ?ブレゼント渡したくて」
横になって寝転がっている此方と目線を合わせるように膝を折ってしゃがみ込み、ニッコリと笑みを向けられた。
とくんと素直に反応する自身の胸の鼓動。
そして顔の温度が上がり、目尻が赤くなったのを隠したくて顔を明後日の方向に反らす。
「ウチの部屋に置いてあるんやけど、貰ってくれる?」
「・・・もちろん、」
目の前で彼女の顔が嬉しそうに、えへへと安堵が混じったような照れ笑いが広がっていく。
それを見て、意識せずとも綻んでしまう自身の顔。
彼女に誕生日を祝ってもらえて、嬉しい。
色んな人が今日を祝福してくれたが比べ物にならない。
彼女さえ祝ってくれればそれで良いとさえ思う。
行こう、と笑顔で差し出された手を何の戸惑いもなく掴み取った。