年の差なんて関係ない。
好きって気持ちは、どうやったて、誰に何を言われたってどうしようもないんだから!
「・・・蛍ちゃんって岬先生のこと好き?」
「は?」
各自が各々好きなことをしていいという今日の能力別授業。
なんとなく実験をする気にも新しい薬を作る気にもなれず、何かメカを制作しているらしい蛍ちゃんの元へとやってきた。
作業の邪魔にならない程度に話をしており、会話の中でふと前から気になっていた先ほどの疑問を唐突に切り出した。
すると怪訝そうな声をあげられ、作業を中断して此方を見上げた顔はしかめられている。
何を言っているのか、というような表情で一瞬たじろいたが堪え、じっとその澄んだ紫の瞳を見つめて返答を促す。
「・・・誰があんなへタレ植物オタク、」
でもパシリとしては良い人選よね。
遠くを見据えながらそれだけ言うと再び手に工具を持ち、発明へと没頭していった。
ほっと安堵の息を吐く。
ひどい言われようだけど、彼女は岬先生へ好意を抱いていないことが分かって良かった。
蛍ちゃんが相手になってしまったら、年の差なんかよりも敵わない。
それでもまだアンナちゃんとか技術系クラスの子とかライバルはたくさん居るけれど。
中には高等部の綺麗なお姉さまという手強い強敵が居るが、諦めるつもりはない。
自分のことなんか眼中になくて、論外で、まるで相手にされてなくても。
先生のことが好きだから負けられないし、この想いは捨てられない。
「誰かプリント運ぶの手伝ってくれないかー」
教室の前の方から聞こえてきた声。聞いただけで誰だか分かったが、
後ろを向けていた体を捻って見れば、教卓の上に山積みされている大量のプリントと困ったような
表情を浮かべている岬先生の顔が見えた。
急いで椅子から立ち上がって、足早にそこへ向かって行く。
「わ、わたしっ、手伝いますっ」
先生の役に立ちたい、近くに居たい。
緊張でどもりながら先生に向かってそう言った。
きっと顔が真っ赤になっているのが自分でもよく分かる。
それを隠すように教卓からプリントの山を掴み取った。
生憎、アンナちゃんや他の子は教室に居なかったので絶好の好機(チャンス)。
「ありがとな、小笠原」
大したことないです、と言う代わりに熱があるんじゃないかと言うほど真っ赤にした顔で首をぶんぶんと横に振る。
微笑されながらお礼を言われ、名前を呼ばれた。
たったそれだけのことなのに嬉しくて嬉しくて卒倒してしまいそう。
想いが届かなくても、子供の戯言だって馬鹿にされても。
貴方のことが大好きです。