キラキラと、ライトに当てられてより煌めいているそれらが眩しくて目を細めた。
色も大きさもデザインも様々で、どれも大して変わらないように見える。
一体どれを渡せば一番彼女が喜んでくれるのか考えると・・・・・溜め息が出た。
12月25日のクリスマスが押し迫った最後の日曜日。
今年は学園内で過ごす最後のクリスマスであり、ある決心を抱いてセントラルタウンに築している"この店"に訪れた。
普通のアクセサリー店とは違う、特別な日に贈るのを専用としたリング専門店。
リングのプレゼントと共にプロポーズの言葉を彼女に贈ろうと、親友の押しもあり決めたのだ。
付き合ってかなり長くなるが改めてそういう言葉を彼女に伝えるのは緊張する。
卒業してからもずっと一緒に居たいと自身は思っているが、彼女はどうだろう。
良い返事を貰える自信など有るわけない。
でも、きっと――――
「なつめ?」
聞きなれた声がしたかと思うと、くいっと腕の部分の服を掴まれ振り返させられた。
見ればやはり聞き間違いなどではなくその顔もよく見慣れている人物。
信じがたい光景に自分の目を疑った。
「・・・蜜柑、」
足元がふらつき、眩暈がする。
よりによって彼女に見られてしまうなんて、誰が予想しただろう。
今井やクラスメイトの方が遥かに良い。
運が悪すぎる自分が空しくて、小さく溜息を吐いた。
「外歩いてたらな、棗がこのお店に居るの見えたんよ」
この店を選んだ自分が悪かったのか、たまたま彼女が店の前を通りかかったのが悪かったのか。
ニコニコと嬉しそうに笑う彼女を目の前にしたら、そんなことはどっちでも良い。
それにもう起きてしまったことは仕方ないし、後悔するだけ無駄だ。
いっそこの場で伝えてしまおうかと決め悩んでる時、感嘆したような驚きの声が隣から聞こえた。
「うわ、この指輪たっかいなぁ。こんなん買う人居るんかな」
ホワロン何個買えるんやろ、と瞳を子供のようにキラキラと輝かす。
どんなに綺麗で大きな宝石の付いたリングよりも、その値段の分だけのホワロンを渡した方がコイツは喜ぶ気がする。
いや、気がするではなくて喜ぶ。絶対に。
色気より食い気、その言葉が相応しい彼女に呆れを通り越して、感心の念しか残らない。
先程とは違う溜息を吐くと、張り詰めていた口元を緩めた。
「・・・食いに行くか、ホワロン」
未だにその指輪一つでホワロンが何個買えるか計算してはしゃいでいる彼女に声をかけた。
急ぐことはない。
まだ卒業まで3ヶ月あるのだから、伝える機会は幾らでも有る。
だったら今は、彼女をたくさん笑顔にしてあげたい。
そのために自分に出来ることは此処で将来の意思を伝えるよりも、ホワロンを食わせてやること。
そうすれば彼女が喜ぶことなど目に見えている。
「うん!」
予想通りの嬉しそうな笑みを浮かべ、大きく頷いた彼女に此方まで笑みが零れた。