寒い冬の朝は布団の中はぬくぬくと温かく、起きることは困難だ。
とうにいつもの起床時間は過ぎているが、冬休みなのだからまだ眠っていても良いだろう。
薄く目を開けて目覚まし時計を見て今の時間を確認すると、再び重い瞼を閉じ落とした。
「お兄ちゃーん!」
眠りに落ちようとしていた途端に聞こえたのは自身の部屋を勢い良く開け放ったドアの音と大きな叫び声。
嫌でも耳に響き入ったそれにより、起きることを余儀なくされた。
上体を起こして騒音を起こした人物を睨み見る。
「・・・・葵」
「見て見てっ、サンタさんから貰ったプレゼント!」
眠りを妨げられ不機嫌な此方のことなど気にせず、ハイテンションで近寄ってくる。
嬉しそうに言う彼女の手に抱えられているのはやけに大きなドールハウス。
前からずっと彼女が欲しいと言っていた物だ。
それをベッドの空いている隙間に遠慮なく置くと、彼女自身もベッドの上に飛び乗った。
勢いでスプリングが軋み体が跳ね上がる。
将来のことを考えて買ったため、まだまだ余裕があるベッドだが、でかい人形の家のせいで自分が潰れそうになる。
「・・・・・邪魔」
「ひっどーい!折角お兄ちゃんにも見せてあげようと持ってきたのにっ」
誰が何時見せてくれなんて頼んだ、と頬を膨らませている彼女に内心で毒づいた。
怒っている様子を見せたのは一瞬だけで、もうニコニコと嬉しそうにプレゼントを眺めている。
たかがプレゼント一つでこんなに喜ぶなんてサンタもさぞ本望だろう。
「ね、お兄ちゃんは何貰った?」
視線をベッドの脇にあるサイドボードに向けた。
その上には、緑の包装紙に包まれ赤のリボンが綺麗に結ばれてた物が置かれている。
いかにも"クリスマスプレゼント"っと言った風な包装。
「あーっ、まだ開けてないじゃん!」
それに気づいて、プレゼントを取ろうと伸ばされた手を掴み取って遮った。
怪訝そうに見上げてきた顔に口元だけ上げて笑いかける。
「お前が出て行ったら開ける」
「何それっ、」
先程のようにまた頬が風船のように膨れ上がった。
怒っているようには全然見えず、むしろ此方を笑わそうとしているかのようにしか見えない。
おもしろくて思わず声を出して笑うと、それが気に障ったようで眉がつり上がる。
「もーいいよっ、お兄ちゃんにはドールハウスで遊ばせてあげないから!」
悪態と共に小さく舌をだして、自身から守るように遊ばせてくれないというそれを抱きかかえるとベッドから下り一目散にドアの外へと向かって行った。
その姿を見て、誰もそんなこと言ってねーよ、と一人笑いながら呟いた。