今日は一年という区切りが終わる最後の日、つまり大晦日。
年明けを先生と一緒に迎えたくて家に訪ねると快く招き入れてくれた。
散らかっていた先生の部屋もざっくりとだが片付けたし、年越し蕎麦も食べたし新年を迎える準備はバッチリ。
後はまったりとテレビを見たり、今年あったことを振り返って話したりで過ごす予定だったのに。
「・・・こんな日まで仕事するなんて、」
馬鹿みたい、と悪態をつきぶすっと不貞腐れた。
そんな発言にも手を止めることなく先生は、山の如く大量に積まれている書類に一枚一枚目を通している。
「新年を気持ち良く迎えるためにも、嫌なことは終わらせとかないとな」
―――この量じゃあ絶対に終わるわけがない。
普段はこういう事務的な仕事に熱心に取り組むことはないのに、どうして今日に限って。
こんな姿、全然先生らしくない。
「そんな露骨に嫌そうな顔されてもな、」
「・・・・だって」
先生が構ってくれなくてつまらない、なんて。
そんな事を口ではとても言えない代わりに、表情に出てしまっているようだ。
どうにかしようとしても余計にしかめっ面になってしまう。
試行錯誤している此方を見て、耐えきれなくなった先生がついに吹き出した。
「・・・笑うなんて酷い」
「ははっ、悪い悪い!年明けたら初詣に連れていってやるから」
もう少しだけ待ってろ。
そう言われ、頭をクシャクシャと撫でられてしまえば素直に頷くしかない。
結局のところ、自分はこの人に弱いのだ。
仕方ないと思い直した時、新年の始まりを告げる鐘の音が聞こえた。