木の上に寝転がって、葉の間から空を見上げた。
空は静かに穏やかに雲が流れ、緩やかに吹く風が頬を撫でる。
それはまるで"日常"を象徴するかのようだ。
毎日変わらなく常にあるもの、それが"日常"。
此処に"君"が居ないことなんて意識されず当たり前のように訪れる。
そして時間の流れとは酷いもので、一分一秒と規則正しく刻まれていく。
"君"が居た時間がこうしてどんどん流れ過去に薄れてゆくのだ。なんて嘆かわしい。
「・・・・つめ、棗ってば!」
「・・・・っ」
急に目の前に表れた親友の顔に驚いて、声にならない声を上げた。
バランスを崩して危うく木から落ちそうになったのを手を掴まれて救われる。
ほっと安堵の息を漏らした彼は"大丈夫?"と聞いてきた。
「大丈夫、じゃない・・・・大丈夫なんかじゃ・・・・」
大丈夫なわけがない。
彼女が居なければこんな平和に意味なんてないんだ。
君がいなくても
変わらない日常
(それは悲しいほど穏やかで)