「じゃあ明日はそういうことで」
いつものように翌日の行動を決めると彼女は椅子から立ち上がった。
今自分らが居る此処は地方にある某ホテルの一角。
彼女と共に行動するようになってからこうして佇まいを転々とし、身を隠しながらの生活が続いていた。
だがただ学園からの逃亡生活をしているわけではない。
学園を変えるために策を練って何かとアクションを起こしている。
正直、学園云々に関して自分はどうでも良いのだが、これは彼女の決意した信念だからそれに付き従いたい。
どんな形であり傍に居て守りたいのだ。
もちろん以前に言われているしこの関係に恋愛感情なんてものは生じない、生じることは一生ない。
自身から彼女に大してそういう気持ちはあるがそれが実ることも報われることもない。
「柚香、」
「・・・・なに?」
自分の部屋へと引き上げようとしていた彼女を思わず引き留めてしまった。
伏せられた色のない瞳がゆるりと此方を見る。
「・・・・・なんでもない」
そう言うと怪訝そうに眉がしかめられた後"おやすみ"と言って部屋を出ていった。
手を伸ばせば簡単に届くのに、伸ばせない。
誰よりもこんなに近くにいるのにこれ以上は踏み出せない。
近くて遠い、これが一生縮まることのない君と僕の距離。
ほら、君と失恋を
両方手に入れました
(失恋とすら呼べやしないけど)