今日のデートはいつもと一風変わったもので、カラオケに来た。
自分は友人と良く来るが、彼はいったいどうなのだろう。
前に蛍とルカぴょんとで四人で来たことがあったが、その時彼は何も歌わなかった。
歌うことに夢中になっていたため気にしなかったが、彼の歌声を聞いてみたいと思う。
だから、二人っきりでなら恋人である自分のために、何か物凄く真剣に歌ってくれるのではないかと、変な期待をしていたのだど。
「・・・棗も何か歌わへんの」
「俺はいい」
スプリングがよく利いている椅子に座ったきりで動こうともしない。
ドリンクを片手にして、馬鹿にするでもなく冷やかすわけでもなく、静かに此方が歌う様子を見ているだけだ。
子供の頃に流行ったアニメソングを歌おうが、流行りのドラマの主題歌を歌っても、怖いほどに何の反応も見せない。
たまに目が合えば滅多にない顔で優しく微笑まれる。
・・・いったい何を考えているのかまるで分からない。
「ウチは棗が歌ってるところを見たいんよ!」
「俺はお前が歌ってるのを見てたいんだよ」
―――不意討ち過ぎる。
珍しく素直なその言葉に、おもわず赤面してしまった。
また彼の顔を見れば罰が悪そうに此方から目を反らしているが、その淵が赤く色づいている。
そんな様子に小さく笑うと、部屋にあるもう一つのマイクを手に取って彼に差し出した。
渋々といった様子で受け取った後、二人とも下手くそな声で歌い上げたんだ。
等身大のラブソングを