今日一日、めちゃくちゃ楽しくて幸せだった。
今まで生きてきた中で一番と呼べるほどに。
まあ出だしは自身が変に拗ねてしまいかなり最悪だったが、それを帳消しにするぐらい堪能した。
あまりにも自身が兼ねてから思い描いていたことばかりでこれは夢なんじゃないかと思い、途中こっそりと頬を抓ってみたけどちゃんと痛かった。
つまり、これは現実。夢幻のような一瞬一瞬は紛れもなく此処(リアル)に事実として存在していたのだ。
「さすがに疲れたかも・・・」
「・・・・柚香先輩が連れ回すからだよ」
先輩の手を掴んだあれからというもの、かなり色々と歩き回った。というよりは一方的に連れ回されたと言う方が正しい。
ショッピングしたり、美味しい物を食べ歩きしたり、遊園地(と呼べるか否かは微妙なものだったが)に行ったり、海が見える公園に来たり。
日も沈みかけている今はその公園のベンチに腰掛けて休息を取っている。とてもこの状態では疲労が蓄積され過ぎていて、
無事家に帰ることが困難だったのだ。
先輩の隣を歩けて、過ごす時間を共有できて。先輩の眼差しの先には自身が居て。普段独り占め出来ない物をたくさん堪能させてもらった。
けれども、人という生き物は実に欲深いものでそれだけでは足りなくなるものだ。
たった一回の"ご褒美"じゃなくてこれから先もこんな日を過ごすことが出来たらどんなに素敵だろうか―――そう望まずにはいられない。
「また何処か遊びに行こうか、二人で」
「・・・・"また"っていつ?」
脳で考えるよりも先に口が勝手にそう言葉を紡いで放ってしまった。
欲しいのはそんな曖昧で不確かな口約束じゃなくて。
もっと確証のあるもの、ゆるぎないものが欲しい。
約束なんかしなくても先輩の隣に居るのが当たり前になるような、そんな"証"が。
「俺は今日だけじゃなくて、いつでも先輩と一緒に居たい・・・、」
「・・・・ナル?」
先輩が困惑してるのが分かる。生憎それでも今は気が急いていて、彼女を気遣っている余裕なんて持ってられなかった。
ゆらり、と波打っている榛色の瞳をまっすぐにのぞき込む。そしてそのガラス玉に映っているのが自身だという優越感。
いつでもこの瞳の中に存在していたいと思っている安直な感情を口にしたら貴女は笑うだろうか。
それでも、良い。滑稽だと馬鹿にされても素直な感情を伝えたい。
この感情を直接に示すたった二文字の言葉を、貴女に。
「・・・好きだよ、柚香先輩」
世話の焼ける親しい後輩なんて立ち位置じゃあ、もう我慢できない。
貴女を独占したいんだ。
ソリストの告白
(貴女しか見えない、)