『学園アリス*棗と蜜柑』
最終改訂 2009.12.18
(※高等部設定です)


「棗っ、誕生日おめでとう!」

日にちが変わったばかりの刻に、近所迷惑とか言ったものをまるで考えていない風な大きな声をそう発しながら部屋に蜜柑が飛び込んできた。突然の訪問者に唖然としている此方に、にっこりと笑みを見せるとずかずかと室内へ入ってくる。そして両手いっぱいに何やら抱えていた幾つもの小包を、机の上へ置いた。

「・・・・何だこれ」
「誕生日プレゼント!」

たくさんの小包を指して何かと問いかけたらそれはプレゼントだと彼女は言う。確かに今日は自身がこの世に生まれ立った日、つまり誕生日。望まずとも毎年色んな人に祝われているがこんな奇妙なものを貰うのは初めてだ。質より量、ということなのだろうか。

「あのな、これ全部で18個あるんよ」

なるほど。年の数だけ用意したということか。なんともまあ彼女らしいプレゼントというか、何というか。失笑ともつかぬため息を吐くと、彼女が"早く開けてみてえな"と急かしてきた。それに促されて小さな包みを一つずつ開いていく。すると中からは苺の飴玉だとかいった予想通りなもの達がでてきた。まるでおもちゃ箱のようだ。 時間をかけて丁寧に開けていき、残りはあと一つとなった。最後のそれは小箱になっている。どうせこれもまたぐだらないものだろうな、と大して期待せずかかっているリボンを解き箱を開いた。

「・・・・・っ!」

中に入っていた思いがけないものに、目を見開いた。
光に当たってキラキラと輝く円の形をした銀色のそれは。

「お前これ・・・・」
「やっと当たりが出たみたいやな」

全部開けるまで出ないなんてどれだけなんや、と不貞腐れたように言った。
そして息を一つ飲み込み、此方を粋な瞳で真っ直ぐに見つめてくる。

「ウチと結婚してください、棗」

最後に開けたプレゼントの中身は、指輪だった。他のものも、全てはこれをフェイクするために用意したのだろう。やけに手の込んだことをしてくれるではないか。素直に嬉しいとは思うが、女である彼女の方からプロポーズされるなんて如何なものだろう。男としての示しがつかない。

「・・・・普通逆だろ、ばーか」
「まあええやん!こういうのも」

返事は?と聞かれた問いに当然決まりきっている答えを返した。



サプライズ・バースデイ

(嬉しくて泣きそうだったなんて、言ってたまるか)
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