コンコン。
部屋の扉をノックされて立ち上がった。
此処にわざわざ訪ねてくるのは蜜柑ぐらいなので、どうせまた彼女だろうと開けると眼前いっばいにオレンジ色の物体が広がった。
南瓜だ。
「見て見てっ、棗!」
南瓜が喋っている・・・なんてことはなく、その馬鹿でかい南瓜の後ろを見ると声の主の蜜柑が居た。
そして彼女を見ると彼方此方に土が付いておりやけに汚れている。
「・・・何だそれ」
「お化けかぼちゃ!岬先生に頼んで貰ってきたんや」
ニコニコと嬉しそうに笑いながら言って部屋の中に押し入ってきた。
「これでな!ジャック・オ・ランタン作ろうと思って」
どすんと広い机の上を南瓜が陣取る。
彼女が両手いっぱいで抱えていただけあって、全貌を見るとその大きさが良く分かった。
これほどの大きさに育てられるのはあの教師のアリスが特別なものであるからなのだろうか。
よくこんなただ大きいだけで役に立たなそうな物を作ったものだ。
それはさておき、一つ疑問がある。
「・・・どうしてそれを俺の部屋でやるんだ?」
「だってウチの部屋狭いし、棗と一緒に作れたらええなーて」
えへへと照れ笑いをするその様にどきんと鳴ったが騙されてはいけない。
「・・・・要は一人で作るのが大変だから俺に手伝えと」
「あはっ、分かってしもうた?」
ゴメンゴメンと舌を出して子供っぽく謝った。
彼女はこうして人を使うのが上手くなった気がする。
まあただ単に自分が甘くなっただけなのかもしれないが。
「とっとと作るぞ、南瓜提灯」
「ジャック・オ・ランタンや!」
スイートハロウィン
(君と過ごす甘い時間)