すうっと大きく息を吸い込んでから目の前のドアに手を掛けた。
「ハッピーハロウィン!」
勢い良くドアを開けはなったのと同時に大きな声でそう叫ぶ。
するとそれは部屋の中に広く響き渡り、元からそこに居た先輩たちが何事かと硬直した。
「な・・・なんつー格好してんだお前」
いちはやく現状を把握した美咲先輩が駆け寄ってきた。
先輩がそう指す自身の格好とは魔女に扮したもの。
ご丁寧にとんがり帽子も被っているし魔法の杖も持っている上から下まで全身完璧な魔女ルックだ。
「魔女やよ魔女!だって今日はハロウィンやろ?」
そう、十月の末日である今日はハロウィン。
だからこうして仮装して特力の教室にきたのだ。
お祭り事が好きな此処なら何かわいわいとやっていると思ったのだが・・・・
「・・・パーティーとかやらへんの?」
教室を見渡してもいつもと何も変わりない。先輩達が身につけているのも普段通りの制服だ。
「もう俺達もそんな歳じゃないからなー」
「・・・・そうなんや」
期待が外れてがっくりとうなだれた。
確かに教室を見渡しても皆変わりなく、自分より年下の子も平然と過ごしている。
自分一人ハロウィンだと浮かれて、こんな衣装まで買って、馬鹿みたいだ――――
そう思うとじわりと涙が目頭に滲んできた。
「でもま、」
翼先輩にぽんと頭を叩かれる。それに反応して俯けていた顔を上げた。
「折角お前がこんな格好してんだからやるか、パーティー!」
自分のことを思って出された先輩のその案に、満面の笑みで頷いた。
ハッピーハロウィン
(皆が今日を楽しめますように)