今は年に一度訪れる、オリオン座の流星群が見える好機(チャンス)。
しかも今年は例年に比べて良く見えるらしい。
次にこれほどの好条件で観測出来るのは70年後という程だ。
だから是非とも見てみたいのだが―――
「なかなか見えへんなあ・・・・」
いつまでも変わり映えのしない空虚な暗闇を見上げながらそうぼやいて冷え切っている手にはあっと息を吹きかけた。
一瞬だけ温かくなったがそれはすぐにまた冷たくなる。
この時期、日中はまだそこまで寒さを感じさせることはないが夜はかなり冷え込む。
それに今はもう深夜の二時だ。一日の内で一番気温が下がると言っても過言ではない。
ぶるりと身震いをした。
「・・・もう戻るか?」
白く染まる息と共に隣に居る彼がそう促した。
"夜に星を見る"と言ったら何故か彼が付いてきてくれたのだ。
理由を問うとお前一人じゃ危ないからだとか。
悪態を装いながら彼なりに心配してくれたのだろう。
その不器用な優しさが嬉しい。
「んー・・・もうちょっとだけ待ってみる、」
棗はもう戻ってええよ。
鼻をすすって笑顔でそう言った。
自分だけならどうなっても良いが、このまま付き合わせてしまったら彼に風邪をひかせてしまう。
そんな迷惑かけたくはない。
「・・・ったく、」
小さくため息を吐いて身動きした彼の様子を苦笑いで見つめた。
呆れられてしまっただろうか。
別れを告げようとしたら、それは不意に背後からふわりと襲った温もりによって遮られた。
「な・・・なつ、」
「仕方ねーから気の済むまで一緒に居てやる」
自身の言葉を遮って言うとぎゅうと力を込めて抱きしめられた。
背中から体中に広がっていく熱。あつくて、温かい。
その心地良い温もりに柔らかな笑みをこぼして、体の前に回されている腕を強く握りしめた。
君と見上げる夜空
(70年後も隣に居てくれますか?)