「歩けるか、柚香」
差し出された手を掴みながら立ち上がり、"大丈夫"と答えた。
歩ける、いや歩かなければならない。
このまま立ち止まっていることなんて自分には許されないのだ。
本当は、今掴んでいるこの手を借りることだってあってはならなかった。
けれども、自分一人で踏み出すにはあまりにも酷で辛くて、無理だった。
彼が此処に来てくれなかったらどうなっていただろう。
「ありがとう志貴さん・・・・志貴」
彼を見上げてふわりと微笑った。
こんな自分を好きになってくれて、ありがとう。
私のレゾンデートル
(貴方が教えてくれた)