腕の中にすっぽりと収まってしまう彼女は見かけよりも全然小さくて、柔らかくて、潰してしまわないか不安になる。
力を込めすぎてしまわないように気をつけて抱き寄せれば、ふわっと花のような甘い香りが鼻孔をくすぐった。
「シャンプー変えただろ」
「あ、分かった?」
上目で見上げて嬉しそうに微笑うと、再び顔を自身の胸に埋めた。
そんな彼女の頭に顎を軽く乗せ、香りを堪能しながら指で細い髪を透く。
こんなにも長い髪なのに何処も傷んでいなくて、触れればサラリと手から溢れ落ちる。
それが心地よくて繰り返していると、腕の中の彼女が小さな笑い声を漏らした。
「・・・なんだよ、」
「や、べつにっ」
そうは言うものの、クスクスと笑う声は止まらない。
訳が分からない此方としては不服で、抱き締めている力を少し強めてやった。
ギュムっという何が潰れた音と苦しそうな声が聞こえたが、スルーする。
「く、苦しいってっ、棗!」
「一人で笑ってるお前が悪い」
「横暴や、そんなんっ」
抵抗して腕で押し返してくるが、彼女如きの力では何の意味も成さない。
どうする事も出来ずうーっと唸り声を上げているその行動に、声を漏らさず笑う。
するとそのまま後ろへと倒れこんだ。
「へ、わっ、わ!」
突然の変化に素っ頓狂な声を上げた彼女ごと、ベッドの柔らかいスプリングに受け止められる。
目を白黒させて戸惑ってる彼女を見て微笑むと、その額に口付けた。
腕の中の宝物